ドントスキップ・シャルウィスキップ

　――ごほっ……ごほん！！　ううっ……この天馬司ともあろう者がごく単純な台詞を言い損ねるとは……！　聞き苦しかったことをお詫び申し上げる！　皆すまなかった！！　それで！！　気を取り直して聞いていただきたいのだが！！
　――もし、もしもだな。たとえオレが恋をしていなかったとしても。たとえ恋をしない人間だったとしても。たとえ誰かに恋をしていようとも、それがたとえ……もしもの話、仮に……類、だったとしても。
　――オレと類のすることが、〝デート〟なのかどうかは、オレと類で決めたいと思うんだ。
　――SNSでいろいろ言われていることも知っているから、この際言及させてもらうのだが……オレたちがいわゆる〝デキてる〟かどうかということも、本来は当人どうしで決めることだからな。今後は、そういう言い方も控えてもらえたなら、ありがたい。あと〝結婚しろ〟とかに至ってはだな、いや、そうしたくともこの国の現行制度が許してくれん状況だからなあ……という……！　オレの場合はまだ類に結婚を申し込めるような段階に至ってはいないし、そもそも恋人として傍にいてほしいという趣旨の告白もできていないからあれだが……オレと類に限らずとも、特に同性どうしに見えるペアに対してあまり妄りに、結婚すればいいだのなんだのと投げ掛けてしまうとな、実はものすごく相手を傷付けてしまっている可能性もあるから、そういう言葉を口にしたくなったときこれからは是非一度立ち止まって考えてみてほし――……む？
　――……えっ……あ……っ！？　あ、わっ、ぅわわわあ゛あああーーーっ！！！！
　――わ、わわ、わっ忘れてくれーーっ皆ーーーっ！！　頼むうううう！！！！　ばばばばれてしまう！！　類にばれてしまう……！！！！　まだ告白できてないんだ本当に！！！！　嫌だせめてちゃんとこんな、こんな公衆の面前でうっかり口を滑らせたようなのではなくて……っ。
　――面と向かって！　真正面から！　直接本人に、ほかの誰でもない類だけに〝お前が好きなんだ！〟って、オレはちゃんと伝えてやるんだからなあああああああーーーっ……！！！！！！！！