ネロがとろん、とした顔していたから、珍しいな、って思ったんだ。
今日は早めに酔っちゃったのかな、最近も相変わらず忙しそうだったし。そういう心配と、正直なところ、人前でお酒を飲みながらとろん、ってしているネロがすごくかわいく見えたから、俺はどちらかというと興味津々でネロの傍へ寄っていった。
「ネロ。シノが無茶言ってごめんね。来てくれてありがとう」
「いいや、お礼言うのはこっちの方だよ。俺もすごく楽しんでる」
そんなふうに言ってネロが笑ってくれたから、俺は自分の中でぽんっとシャンパンが弾けたと思った。
空気に酔ってるのは俺もそうだったのかもしれない。
「……ほんとう? よかった……」
「ああ。ヒースやシノと久し振りに会えたのも勿論だけど、こんなふうに、あんたらの交友関係を紹介してもらって、お友達らの顔を実際に目にできるとさ……なんか、感慨深いな。よかったなあヒース、シノ、頑張ってきたんだなあ、って気持ちと、こんなにお友達ができても、俺らはやっぱりあんたたちに愛されてんだよなあ、って嬉しいような得意なような気持ちと……。まあ、総じて、悪くない気分だ。本当に」
ネロは照れる様子も憚るふうもなく、滑らかに言葉を舌に乗せた。その表情はほんとうにほぐれていて、穏やかで、ネロがあまりにも当たり前みたいな饒舌さで俺とシノに愛を向けてくれるから、俺もつい、恥ずかしがったり照れたり臆したりすることを忘れて、ただただ、幸せになる。
俺たちの好きな人を全部呼んでハロウィンにかこつけたパーティする、なんてシノが言い出したときは、どうやってあいつの動きを封じ込めようかと毎夜魘されながら考えたものだけれど。それなのに、ほかでもないネロにこんな顔をしてもらえたなんて、やっぱりシノはすごいんだ、って、俺はそういう意味でも嬉しくて堪らなくなってしまった。
「それにさあ、」
とろとろと頬がゆるんでくるのを抑えられない、俺の前で、ネロはなおも言葉を継いだ。なにやらうっそりと、視線を流す、彼の見る方を俺も自然と追う。
その瞬間。
――は、とした。
彼の見つめるものが分かって、俺は思わず勢いよくネロを振り向いた。ネロは、とろんと、していた。
とろけきった瞳を。この表情ならば、俺はもう彼の熱を、ただの酒の所為だろうかなんて思うべくもない。それは明らかな。今宵のチョコレート・リキュールなんかよりも、それはよほど。よほど熱い。
「――あのひとが、〝いい意味で人目を惹いて〟いるから、今夜は、よかったよ」
熱く甘く蕩けた視線が。俺たちの先生を、俺たち四人の愛しい一部を、アイスクリームに深く差し入れる白銀のスプーンみたいなしっくりと重たげな手触りで、見つめていた。
だってあなたはすてきなひと
