「不浄だ」
低く一言だけ言い放って剣を足元に突き立てる。浅黄の砂煙がごうと立ち昇り瞬間に高々と旋風が巻き起こった。砂の壁に辺りを阻まれ吹き荒ぶ風が鋭く目を掠める。
「――俺の愛でる光は砂と風と月の輝き。昏く眩しすぎる刃のそれじゃねえ」
そんな、場違いで身勝手な話が。
あるものか、と口を開きかけたそのとき、既にその男の腕は風の壁を突き破って左近の眼前に現れていた。
そして。
「――お前だって、同じなのさ」
容赦の無い言葉が静かに吐きつけられたのだ。
左近の背骨は不覚にもしんと冷えた。呪いのような言葉を、咄嗟におかしくなったように必死で否定しようとする。
喚き出さんばかりのその声を、まるで諦念と憐憫でもって押し留めるかのように、頸の肉へ手甲越しの冷たい指が食い込んだ。
忠義心を厭う
