尼姉

サイケ

 びー玉がいっぱいに散っている。
 縁側。板張り。時の沈着の色か。
 落ち着いた灰茶に、はらはらと広がる萌葱色。埋もれるような。重なり合う。
 頼綱が横たわっている。やわらかそうな萌葱色の着物。無垢で何もない。澄明な空気。二人の間に、それしかない。
 びー玉がひかっている。斜光。
 官能的な目線。
 俺は上から見下ろす。仰向けの頼綱を見下ろしている。頼綱は見上げる、立っている俺を見上げている。
 ただ真っ直ぐの、目線。下へ、上へ。真っ直ぐの。真っ直ぐの。純粋な。幼気な。
 官能的な。
 頼綱が手を伸ばしていた。
 俺はその手を取ったのだろうか。
 スクリーンをいくつか飛んだ。乳白色の沈黙が攫ったので。
 泡が弾ける、ラムネには、びー玉。泡が迸る。下から上へ。足元から、真上へ。俺は頼綱を抱き締めて、抱き締めて空間にいた。
 ガラスを出た。たぶん、だ。
 そのあいだ、俺たちはどこかにいて、
 そして、びー玉が散っている。
 今また、びー玉が散っている。
 板張りの縁側、横たわる頼綱、萌葱の着物、。
 俺も萌葱に埋もれ。
 埋もれていた。頼綱の熱がある気がする。あれ。
 あれ。追う。追うから。
 
 埋もれ、
 夢で、
 ぱ。
  よ。

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