口数が少ない。
云わぬが花、とは言うけれど。
こいつは必要なことを語らなさすぎる、と思った。
「帝釈天、言葉に気を付けろ!」
「ん……?」
かと思えば、ずけずけと要らぬことまでよく語る。明け透けで包み隠さず飾らない。嘘が無い。残酷なほどに嘘が無く、不器用なほどに嘘が無く、だからなのかも知れなかった。
嘘の吐けない彼が何かを庇い護るには、端から口を噤むしか。
傷付かず、傷付けず――言葉によりそれを成そうとするのならば。事実を歪曲し、脚色し、との嘘を騙れぬ彼は、何も語らずという選択しか、採ることができなかったのではないのか。
「――いいから話せ!」
聞かせてほしい。
今、ならば。
理屈ではない感情も、厭味ではない直言も、今ならばきっと、私は無駄とは思わない。
躍起になって否定した。見向きもせずに見下した。それは、他でもない私の心が、ともすれば惹かれたがったからだ。許したがったからだ。通じたがったからだ。
同時に、私はそんなことがあってはならないと強く信じ込んでいた。なぜならば、私が惹かれたがった彼の心は―私の視界に映る限り、到底、許すに値しないものだったから。通じ合う筈もないものだったから。
それが、漸く、少しずつ。本当に少しずつ。
今、漸く、変わることができ始めたんだ。
なぁ、感じているだろう。私だけではない筈だ。
だって。今、漸く、私の躍起な思い込みが解け始めているのは――
――私だけではない、お前の方から、こちらへ歩み寄ってくれたからなんだ。
私の声が聞こえるか?
お前の息遣いだけが聞こえている。
話をしたい。話をしたい。
下手なのはお互い様だと認めてやる。
私の偏屈な思い込みを、もっと思い切り引っ剥がしてほしい。痛いくらいでいい。情けなさを露呈させて。触れたい。知りたい。お前の過去を、お前の想いを、お前の声を、お前の今を、…………
お前の口から、聴かせてくれ。